迷い込んだ道

これは私が友達の家へ行った時の話です。

友達の家にはバイクで行きました。
家に行くのは初めてで少し遠い上、田舎だったので人通りや目印も少なかったのですが、迷わずに辿り着くことができました。
ほぼ一本道といえるほどの簡単な道のりだったので、帰りも迷わずに済みそうだなと思っていました。

それでも田舎道だし、暗くなってしまうと視界が悪くなるので早めに帰ろうと思っていたのですが…
他の友達も集まり盛り上がってしまったため、当初の予定よりかなり遅く22時頃になってしまいました。

帰りもバイクで行きに通った道を進んでいたのですが、街灯もまばらで既に周りは闇に包まれており見づらく、人の気配も全くありません。
1人で何もない道を走っていくのは思った以上に不気味で、不安などの気持ちに駆られましたが、とにかく前に進んでいこうとバイクを走らせていました。

私はめったに道に迷うタイプでは無い上、一度通った道は忘れないので暗くても大丈夫だと、ひたすら自分に言い聞かせます。
この頃にはもう帰りが遅くなってしまったことを後悔していました。

初めは通ったことのある道でした。それがいつのまにか道を間違えたのか…山道のようなところに入ってしまいました。
行きは一本道だったので帰りも一本道のはずです。
知らない道に出るはずはなく、狐につままれたような気分で嫌な汗が噴き出てきます。

行きに通った道に、もしかして脇道があってそこに迷い込んでしまったんだろうか…。
周りは木が生い茂っていて山奥に入ってしまったかのようで、引き返そうかとも思ったのですが、一本道だったはずなのでとにかく走れば知ってる道に出るはずだと思い込んで進みます。
しかし走っても走っても同じような道で、灯りは自分のバイクのライトのみ。
道は平坦では無かったので集中して走ります。

山道に入って30分ほど経った時でした。
前に車が止まっているのが見え、中には人影が2人見えました。
ホッとした私は道を尋ねようと思ってバイクを止め、携帯のライトを頼りに近づいて声をかけました。

「すいませーん…」

しかし2人とも何度声をかけても無反応で、よく見てみると不気味な程青白い肌の色をしていました。
異変に気づいた私は恐ろしくなって急いでバイクに飛び乗り、心の中で
「早く家に着け!早く着け!」
と何度も祈り叫びながら爆走しました。

程なくして、遠くに歩いている人影が見えました。
さっきの出来事から、もはやそれが人だと思える状況ではなく、とにかく冷や汗が止まりません。
逃げたい気持ちを抑えてスピードを上げ、その人を追い抜こうとした時でした。

「ワハハハ!」

その人の首だけが急にぐるんとこっちを向いて、不気味に笑い出しました。

恐怖とパニックで泣きながらも、私は必死にバイクを走らせました。
もしかしたら追いかけられるかもしれないという恐怖から、振り向くことは出来ませんでした。

気がついた時には街灯も車通りもある、知っている道に出ていました。
緊張と恐怖から解き放たれた私は、バイクを止めて座り込んでしまいました。

今のは一体なんだったのか…。まるで小1時間ほど別世界に行ってしまったかのようでした。
本当に戻ってこれて良かったと思いながらも、この経験は今思い出しても不気味で身震いがしてしまいます。

 

美人の肩こり

これは私が大学の頃に知り合った、超美人な友人の話です。

彼女は芸能人に例えると、某清楚系多人数アイドルグループのセンターで活躍されている方に似ている程の容姿を持っていました。
彼女くらいの美人さんだと、もはや女性からは嫉妬の対象ではなく崇拝の対象となり、私も例外ではなく崇拝していました。

男性にも女性にもモテモテの彼女ですが、繁華街に行けばスカウトマンからの声掛けも日常茶飯事です。
彼女といるとナンパとスカウトの2つで行列ができることもあり、あまりの注目ぶりにはただただ驚きました。

そんな超美人の彼女ですが、私は知っています。
ルイヴィトンのバッグに密かに忍ばせていたもの。それはアン○ルツヨコヨコでした。

20歳前後なのにアン○ルツヨコヨコが手放せない彼女は
「これ良いわよ~」
と、いつも私に勧めていました。
そんな彼女と久しぶりに再開した時、丁度肩こりを感じてアン○ルツヨコヨコを使っていた私は「本当にコレいいね!」と話を振ったら、彼女は思い出すようにこう言いました。

「実はね…私、もうアン○ルツヨコヨコいらなくなったの。」

理由を訊くと、こんな答えが返ってきました。
「この前、合コン言ったの。そしたらある男性から『あなたの背中にたくさん乗ってますよ』って言われたの。」
そこまで聞いた私は、その男性が美人の彼女の気を引こうと新手の口説きをしただけだと思いました。
さらに彼女はこう続けます。

「背中に向かって塩をまくといいよと言われ、すぐに実践したの。翌朝、昨晩塩をまいたことなんてすっかり忘れていたけれど、肩の異常な軽さで思い出したの。それから、アン○ルツヨコヨコは使ってないの。」

肩こりの原因が幽霊なのかは分かりませんが、彼女のように類い稀な容姿をもつ女性は、アチラの世界の方々にも好かれているのでしょうか。

これは私が大学の頃に知り合った、超美人な友人の話です。

彼女は芸能人に例えると、某清楚系多人数アイドルグループのセンターで活躍されている方に似ている程の容姿を持っていました。
彼女くらいの美人さんだと、もはや女性からは嫉妬の対象ではなく崇拝の対象となり、私も例外ではなく崇拝していました。

男性にも女性にもモテモテの彼女ですが、繁華街に行けばスカウトマンからの声掛けも日常茶飯事です。
彼女といるとナンパとスカウトの2つで行列ができることもあり、あまりの注目ぶりにはただただ驚きました。

そんな超美人の彼女ですが、私は知っています。
ルイヴィトンのバッグに密かに忍ばせていたもの。それはアン○ルツヨコヨコでした。

20歳前後なのにアン○ルツヨコヨコが手放せない彼女は
「これ良いわよ~」
と、いつも私に勧めていました。
そんな彼女と久しぶりに再開した時、丁度肩こりを感じてアン○ルツヨコヨコを使っていた私は「本当にコレいいね!」と話を振ったら、彼女は思い出すようにこう言いました。

「実はね…私、もうアン○ルツヨコヨコいらなくなったの。」

理由を訊くと、こんな答えが返ってきました。
「この前、合コン言ったの。そしたらある男性から『あなたの背中にたくさん乗ってますよ』って言われたの。」
そこまで聞いた私は、その男性が美人の彼女の気を引こうと新手の口説きをしただけだと思いました。
さらに彼女はこう続けます。

「背中に向かって塩をまくといいよと言われ、すぐに実践したの。翌朝、昨晩塩をまいたことなんてすっかり忘れていたけれど、肩の異常な軽さで思い出したの。それから、アン○ルツヨコヨコは使ってないの。」

肩こりの原因が幽霊なのかは分かりませんが、彼女のように類い稀な容姿をもつ女性は、アチラの世界の方々にも好かれているのでしょうか。

 

初めての一人暮らし

これは私が初めての1人暮らしをした時のお話です。

1人暮らしは初めての経験で、期待と不安の両方の気持ちがありました。
家賃は安めで駅からは近くて、築年数も新しめの場所がいいなと思っていました。
しかし当然ながらこの条件に合う場所はなかなか見つからず、何かひとつでも条件を諦めれば見つかるという不動産屋のアドバイスで、築年齢10年のところを選ぶことにしたのです。

きっと古くてボロいイメージなんだろうなと思いながら内見に行くと、意外と綺麗な造りだったのでびっくりしました。
部屋の中はジメッとしていて、長い間人が住んでいないような印象はありました。
陽当たりも良く収納有、お風呂は追い焚き機能がついていたので、これは掘り出し物だと勘違いした私は、他の人に取られてしまうという焦りもあって即決してしまったのです。

引越をして新生活が始まりました。
昼間は太陽が入り明るく気持ちが良いのですが、やはり夜になると1人は寂しく少し怖い気持ちにもなりました。
まぁ初めての1人暮らしだしそのうちこの生活にも慣れるだろうと思っていたのですが、気持ちは日が過ぎても落ち着かず、あまり眠りにつくことができないため毎日お酒を飲んで気を紛らわせていました。

気がつくといつの間にか眠っていたのですが、どこからか聞こえる物音で目が覚めました。

「何の音かな?」
身体を動かして部屋を見ようとしたものの、全く動きません。金縛りです。
金縛りは以前もなったことがあったので、焦らず動く目だけを頼りに辺りの様子を伺います。
どうやら物音はお風呂から聞こえているようで、シャワー?からポタポタと水が垂れているような音がします。

当然ながら寝る前は蛇口をしっかりと締めていたはずです。
いつから水が出ていたのかは分かりませんが、とにかく金縛りをほどこうともがきました。

すると異変が起きました。
水の垂れる音が、お風呂場から近づいて来るのです。
何かの気配も感じ、恐怖でパニック状態になった私は目をつぶって「助けて!助けて!」と何度も頭の中で繰り返し叫びました。
ですが容赦なく音と気配は私に近づき、恐る恐る薄目を開けてみると…
黒い塊が動いているのを目にしてしまいました。

気づくと朝になっていました。
部屋が明るくなって体も動くことに安堵した私は、昨日の出来事が夢だったのか現実だったのか分からず、お風呂場を確認しに行きました。

シャワーの水は止まっていました。そもそも蛇口は全く緩んでもいません。しかし足元を見ると水たまりができていたのです。
そして水のシミが足跡のように点々と、私のベッドの横まで続いていました。

次の日、1人では居られないと感じた私は友人を呼んで泊まってもらおうと思いました。
その友人は、いわゆる霊感のあるタイプです。
ところが友人は部屋に来るなり「この部屋何か変な感じがする」と言い、泊まるのを拒否されてしまいました。
友人には、私が体験した事は何も伝えていません。
これはマズいということで、私は友人の家へ泊まらせてもらうことになりました。

後日、不動産屋さんで状況を説明すると、実は事故物件だったと聞かされました。
本当は入居する前にその説明をしなくてはいけないのが決まりらしいのですが、案内してくれた方が新人で知らなかったようです。
私はそのまま部屋を解約して、引越ししたばかりで転居することとなりました。

事故の内容は怖くて聞くことはできませんでした。
でも、お風呂場で何かがあったのだろうとは思っています。
今もあの部屋が存在しているのかは知りません。

 

人をはねた夢

私は釣りが趣味で、連休となれば仲の良い友人達と夜釣りを楽しんでいました。
その時も深夜1時まで友人2人と夜釣りをし、その後I県からT県の友人宅まで移動してまた釣りをしよう、ということになりました。

夜釣りからの移動は予想以上にキツく、睡魔と疲労に襲われながらもなんとか2時間程で友人宅のあるT県に到着しました。
そこで限界を迎えた私達は、近くの公園で車を停めて朝の待ち合わせ時間まで仮眠をとる事にしました。

公園には街灯もなく、山に隣接した林の中にポツンとベンチ一つがありました。
なんとなく薄気味悪い場所でしたが、そのまま寝落ちしてしまいました。

何時間も運転していた私は凄く眠いのですが、睡眠が浅く何度か目を覚ましていました。
そのうち夢の中か現実かは記憶が定かな状態ではなくなりました。

気がつくと、私は寝ているはずがハンドル握って運転している状態になっており、山道国道をひたすら走行していました。
すると突然、フロントガラスの前に真っ黒いスーツと白いワイシャツを着たサラリーマン風の中年男性が飛び出して来ました。

ギャーと大声を出し、ブレーキを踏みつけてクラクションを鳴らす私。
やばい。やばい。
人はねた。

私は手と足がガグガク震えて、ハンドルに頭を抱えて脂汗と半泣き状態になってしまいました。

やってしまった。

運転席を降りて確認しようと、ふと助手席と後部座席に座る友達2人をみると、2人共「???」が浮かんでいるのが分かるほどきょとんとした顔をしています。

友人「お前どうした?」
私「俺、人をはねたよ。死んでるよ絶対…」
友人「え?! お前運転席で寝てただけだけど…。ここは公園の駐車場だぞ、お前大丈夫か?」
友人「お前がいきなりムクっと起きてクラクションバンバン鳴らしてブレーキガンガン踏み込んでギャーギャー騒ぐから、ビックリして俺達飛び起きたんだぞ。」
私「夢か?いやぶつかった感触あったし現実か?」

私はそのまま放心状態になりました。
現実か夢か、正常に判断できるまで時間がかかりました。

冷静になって車を降り、外の様子を見てみると車のボンネットも凹んでいません。
ホッと胸をなでおろしたものの、ボンネットにぶつかったあの感触と音。そして真っ青な顔した中年サラリーマン姿ははっきりと覚えていました。

朝になり、友人宅に集合しました。
友人達は笑い話といった感じで、私が夜に起こした出来事をT県の友人に話をすると…その友達が真っ青でビックリした表情に変わりました。

「そこの公園で寝たのか…。」

T県の友人の話によると、2日前にその公園で首吊り自殺があったらしいです。
しかもその自殺した人が黒いスーツで白いワイシャツを着たサラリーマン風の人らしく、私が夢でひいた男性とそっくりでした。
自殺した方の第一発見者はその友人だったそうです。

公園は自殺の名所で、自殺者が後を絶たない場所らしいのです。
T県の友人は霊感が強いタイプで、私達に
「夜釣りからの深夜ドライブで疲労困憊した疲れた心に、その方がすうっと入って来たのかもしれない。幽霊も悪さしようとした訳じゃなく、深夜の運転や夜釣りに気をつけろと警告しに来てくれたと思うよ。」
と話してくれました。

その後、友人達と公園へ戻りお線香と酒を供え「気をつけて遊んできます」と手を合わせました。
そして釣りに出かけると全員が爆釣して、最高の怖楽しい釣り旅となりました。
いつもはまったく釣れない場所なのに何故だろうか。

 

隠し事だらけのSさん

私の職場にはSさん(仮称)という方がいらっしゃる、いやいらっしゃったのですが…
いろいろと衝撃を受けましたので、お話させて頂きます。

Sさんは私より3年ほど先輩で、もはや一人前に仕事を任され始める立場ではありました。
しかし毎日のように先輩方から怒られていて、まだ新人の私から見ると
「皆そんなに怒る事ないのにな。かわいそうに。」
と、かばいたくなるような状況でした。

ところが私も仕事を覚えていき、会社の歯車として活躍出来るようになった頃、Sさんが怒られる理由が分かってきました。

Sさんは必要な報告を一切上げないのです。
仕事の進捗等、社内の出来事は勿論の事、他社からの請求書といった大事な案件まで全てです。
Sさんに届いた出来事は、Sさんで止まってしまうのです。

よく会社宛てに、弁護士さんからお手紙が来るな~とは思っていましたが、それらの内容は全て他社から頂いた請求書が、Sさんで止まって未払いとなっていた事への催促状だったのです。

当然ながら上司や社長は激怒します。
しかし当のSさんは
「すいません…」
というばかりで本当に反省していないようで、何度も同じ過ちを繰り返します。
お客さんからSさんに直接支払いの催促があった時など、Sさんは
「あれ~経理の子に言ったはずなんですけどね。もう一度言っておきます~。」
なんて言っているそうで、他人事です。
完全にSさんのせいなのですが…。

その反面、私達後輩へは先輩面した会話をしてくるのです。
会話だけを聞くと、仕事出来る人なのかな…と錯覚を覚えるほどの饒舌ぶりでした。
今から思えば、サイコパスな人の特徴だったのかもしれません。

そんなある日、Sさんが行方をくらませました。
携帯以外の荷物やら財布やら全てを置いて、出張先から忽然と姿を消したのです。

Sさんが受け持っていた仕事は全て止まり、会社へクレームの嵐が吹き荒れます。
日々の対応に追われながらもSさんを探し、ついに実家へ戻っていた事が判明しました。
Sさんは行方をくらました罰として、与えられていた会社携帯を没収されたのですが…ここから驚きの事実が溢れ出てきます。

まず、バツイチだったのは知られていたのですが、とんでもない額の借金も抱えていました。
以前に会社を作ったものの失敗し、負債を抱えていたそうです。億近い金額なんて個人で返せるのかな…と思います。

別れた奥さんとの間には、中学生になる息子さんもいらっしゃったのですが、養育費は払っていませんでした。
それなのに出張した時には会社の経費を「接待代」としてお客さんと飲んでいるように見せかけて使い込み、夜の街で豪遊していたことも明らかになりました。
女の子たちと仮装してはしゃいでいる写真も携帯から出てきて、呆れてしまいました。
そしてどうやら、飲み屋も経営?していたような感じがあったそうです。

更に驚きなのが、隠し子の存在です。
その子供も中学生くらいの男子ですので、結婚と同時に関係があったと推測されます。
しかも隠し子の方には良い父親面をしていて、隠し子から
「お父さんいつもありがとう!お仕事お疲れ様!」
なんて感謝のメールが入っていました。
別れた家庭の方には、父親らしい事は一切していないのに…。
Sさんのご親族も、あっけにとられていました。

Sさんは「会社でパワハラを受けている」と言って実家にかくまって貰っていたようですが、そんな嘘は直ぐにバレたようです。
世の中、こんな人がいるんだな…と強く感じさせたSさんは、その後任せられた仕事があらかた片付いた頃、また行方不明となりその後のことは分かりません。

最後に、ちょっとホラーな出来事が1つありました。

別れた奥さんとの息子さんが、友達と遊んだ時の写真を撮ってSさんに送っていたそうなんです。
その写真を見た会社の人達がザワついていたので、何だろうと思い私も見せてもらいました。

その写真は、息子さんが建物の壁の前に立っている様子を写したものでした。
写真には息子さん1人だけが写り、他人は入っていない状況です。
なのに、息子さんの腕が1本多いのです。

私は人生で初めて心霊写真を見て、本当に震えが出ました。
Sさんにはきっと、まだ隠している事実があるのではないかと感じています。

 

追い出すもの

これは私の友人の話なのですが…

友人の実家は結構な田舎なのだそうです。
様々な野生動物が出てくるけど、それでも平和で人も優しく、確かに不便かもしれないけどもずっとここに居たい。
そう思える所なのだとか。

高校生のある日、友人はいつもと同じように下校していたそうです。
すると学校と家の道のりのほぼ中心辺りで、何故か急に
「私は、この町を出て行かなければいけない。」
そう思ったというのです。

何かが見えたとか、聞こえたというきっかけがあった訳ではないと言います。
それなのに、こんなに好きな町を出て行かなくてはいけないという思いに駆られたのだそうです。
友人はショックを受け、しばらく沈んでしまったと言います。

しばらくして地元愛も持ち直してきた頃、突然嫌な思いに駆られた場所で死んだ烏を見ました。

もちろん、動物も多い田舎なのでそういうことがあってもおかしくはありません。
ですが同じ場所ということに、友人はまたも嫌な気持ちになったと言います。

そしてその数日後、同じ場所で誰もいないはずなのに、ひたひたと歩く音が後ろから聞こえたそうです。

隠れられるような場所は無かったし、動く物も見えない。
ただ、何かが後ろから付いてくるような気配と足音だけがあったのだとか。

話はさらに続き、その後も同じ場所で気配や足音、バチッという変な音もしたと言います。
都会であれば別の道を通って帰ることも出来るのかもしれませんが、友人はその道でなければ帰れません。
更に不思議なのが、行きは何も起こらないというのです。帰りにだけ異変が起こるのです。

ですがそんな事にも慣れてしまい、いつも通り暮らしていると夢を見ました。
夢には誰か分からないけど人が出てきて、姿も覚えていないらしいのですが、その会話の内容だけ覚えているそうです。
その人は
「今までいろんな事をしてきたのは私。出て行ってほしい。」
と言ったそうです。

その夢は何度も繰り返し見て、ついに耐えかねた友人は
「もう出て行きます。」
と返事をしたら、帰り道の異変も夢も無くなったらしいです。

結局、友人はこうして地元を出ています。帰る気もないそうです。
その後友人に異変は無いそうですが、地元はただただ人が減っているらしいです。
過疎化が酷い地域ではあるそうですが、何か他の要因もあるのかもしれないと感じた話でした。

 

おばあちゃんにもらった人形

母子家庭で育った私は、徒歩圏内に住んでいるおばあちゃんに半分は育てられたようなもので、自他共に認めるおばあちゃんっ子でした。
そのおばあちゃんから貰った人形があり、中学生くらいまで部屋に置いて大切にしていました。

ところが中学生特有の反抗期を迎えると祖母の家に行くことも無くなり、大切にしていた人形もいつしか押し入れの中へしまいこんでいました。

母から祖母が寂しがっていると言われても、当時は母親と話すことさえも嫌な状態です。
祖母が嫌いになった訳ではないのですが、会いに行く事が何となく面倒と思ったり、幼い頃のように楽しく話すことも出来ないと感じ、ずっと避けていました。
高校生になった時も祖母はお祝いをくれたのですが、素っ気ない態度をとってしまいました。

あれほどおばあちゃんっ子な自分だったはずなのにと思いながら、祖母が入院をした時もお見舞いに行かなくては、と思っていてもなかなか行けずにいました。

高校も卒業が近くなった頃、部屋にある押し入れが物で溢れていたので、大掃除をすることにしました。
昔の写真や着なくなった洋服などと一緒に、おばあちゃんに貰ったあの人形やゲームセンターでとってしまっていたぬいぐるみなどが出てきます。
こんなもの保管していても意味がないと、ごみの日にまとめて出しました。

押し入れの掃除が終わった頃、母から電話がありました。
「おばあちゃんが危篤だから、仕事を早退して病院へ行くから…」
長く入院していたので、ひょっとするととは思っていましたが…ショックでした。
私も行くべきか悩んだのですが、来いと言われたわけでもありませんし、長いこと会っていない罪悪感もあります。
私なんか行ってもいいのかとくだらないことを考えているうちに、母から祖母が亡くなったという知らせを受けました。

親戚が祖母の家へ集まるということで、私も久しぶりに祖母の家へ向かいました。
祖母の部屋は長い闘病生活を物語るように、閑散としていました。

とりあえず祖母の家へ泊まるために、荷物を取りに一度帰宅します。
ところが、自宅の様子が何か変なのです。

何とも言い表すことができない違和感を覚えたものの、早く荷物を準備しようと家へ入ろうとすると中にも違和感が広がっていて、誰かが居る気配もします。
一緒にいた妹と玄関で立ちすくんでいると、そのうちどこからか話し声が聞こえ始めました。

「ボソボソボソボソ」

お経のような感じで、男女の声がハッキリと聞こえます。
怖くなった私と妹が外へ出ると、今度はハイヒールのような靴音だけがすぐ近くで聞こえ、猫が興奮して鳴いているような声もします。
妹は、ハイヒールの音だけで猫の声は聞こえないと言います。
一体何が起こったのかも分からず、パニック状態でいると…家の前に人が立っているのがうっすらと見えました。

それは祖母でした。

どうしてこんなに怖い思いをさせるのだろうか。
私がお見舞いに行かなかったこと、会いに行かなくなったことを恨んでいるのだろうか。
金縛りになったように私の体は動かず、祖母へ近づくことも出来ません。
興奮したような猫の声はさっきよりも小さくなっていますが、ハイヒールの足音はまだ聞こえています。
すると次の瞬間に全ての音がピタッと消えて
「捨てたらいかんよ」
と、祖母の声が耳元で聞こえました。

「人形だ。」

無意識に自分の口から出た言葉でハッとした私は、祖母から貰ったあの人形を思い出しました。
今日捨てたばかりだからまだあるはずだと思い、急いでごみ置き場へ行くと、袋にいれていたはずの人形がごみ置き場の隅に座らせられていたのです。
「ごめんね」
そう言いながら人形を持ち帰ると、さっきまで異様な空気に包まれていた自宅がいつもの感じに戻っていました。
妹とはさっきまでの出来事を話すこともせず、たんたんと荷物を準備し、部屋に人形を置いて祖母の家へ向かいました。

この話をすると、一連の出来事は祖母が怒って起こした恐怖体験であるように誤解をされるかもしれません。
ですが私は、祖母から貰った人形が私達のことを守っていてくれていたのではないかと思うのです。
それを私が捨ててしまったことで、これまで人形が近づけないようにしてくれていた幽霊?が近づいたのではないかと、そう思うのです。

祖母から貰った人形は、今では自宅で大切に飾られています。